朝飯を食べて、撤収準備をしている頃には、窓から庭を見ると並べてある鉄製のテーブルが光っている。昨日イメージしたレインウェアのフードをかぶり上からメットをかぶれば頭が濡れないじゃないかというひらめきも今日は試せる。
ということで、結構居心地のよかったホテルを出発する頃には、本降りになっていた。冷たい雨が間断なくあたるが、中まで濡れることはあるまいとグラナイオ駅をめざす。
最初かなり登りが続くが2メートルくらい先を見て、イチニ、イチニと号令をかけながら上がる。地図で見るとホテルから駅までは3キロ位の距離だが、実際には5キロくらいに感じた。最後は下りであったが、雨の日の下りは下り坂最高!なんて走ったら大変なことになるので、慎重にブレーキをかけながらゆっくりと下りる。体は寒くはないが、指切りグローブから出ている指先や雨を若干通してしまうPEAKの自転車用パンツのため足が冷たい、さらにびっくりしたのは吐く息が白くなるのだ。10度以下5度とか6度くらいかもしれない。
でも距離はたいしたことないので、グラナイオ駅についても余裕はあった。9時22分発に乗る予定であるが、駅には駅員も客も誰もいない。リージョナルの列車でも、全部は止まらないし、9時を逃すと次は12時22分までないのだ。時刻表で確認すると9時の列車は自転車マークもついている。3,40分待つしかない。
誰もいないグラナイオ駅 |
ホームに水たまりが出来ている |
シエナまでは40分くらいで着く。シエナのふた駅前くらいから、乗ってても勾配が分かる登りに入る。この列車ものすごいトルクがあるのかも知れない。iPhoneのアプリ「標高ワカール」でみていると1秒間に1メートルくらいの勢いで登っていることが分かる。
シエナ駅はホームが6番線くらいまである大きな駅だが、やはり雨が降っている。そこからホテルまで約3キロ、更に登りが続く。そして旧市内に入ると墓石ほどの大きさの石が斜めにならべられた石畳、通るところがすべてホンイチの街並みという感じ。ホテルにチェックインしてしばらく部屋にいたら、表に日が差しだしたので、カメラを持って街に飛び出す。その話しはこのあとすぐ。
<ホンイチの街並み>
はじめシエナは訪問都市に入っていなかった。あまりに有名だし、観光客だらけであることがわかりきっているので、何となくパスしようと思っていた。ところが出発のひと月位前に池上俊一の「シエナー夢見るゴシック都市」(中公新書)を読んで、行かねばなるまいと思ったのである。著者の池上氏はシエナに入れ込んでいて毎年のように訪れて、古い文献を資料館に行って閲覧している。でもそれが自分がシエナに行く動機にはならない。九人執政官時代にシエナの街は概成するが、それから今日まで市民とシエナの街の関係はずーっと一貫している、強欲なフィレンツェからの様々な干渉にも治世者と市民が一体となって対応してきた。だからシエナは街そのものも昔のものを手入れはするにしても使い続けてきたし、カンポ広場で毎年2回行われるパリオというコントラーダ(地区)対抗の競馬など祭りや伝統行事を守ってきた。そのシエナの街並みが悪いはずがないではないか。ということでこれから3枚街並み写真をご覧に入れます。誰が撮ってもちゃんと撮れます。どこを撮ってもそれなりに見栄えがする写真が撮れます。だけどこれが行政の細やかな規制と住民の街を守る気概のおかげで成り立っていることを忘れないでください。
シエナの普通の街並み |
雨水を道路中心で排水している |
坂が多いが、遠くにトスカーナの緑が見える |
シエナ「Hotel Antica Torre」☆☆☆