2014年4月3日木曜日

街並み評価式 適用事例海外編(1)

 日本国内だけでなくアジアでもヨーロッパでも、そして住宅地だけでなく商店街やオフィス街でも普遍的に適用できる評価式をつくることが目的なので、海外でも適用してみることにします。場所は昨年(2013年6月)調査してきたイタリアの中から、4都市をピックアップして試してみます。
 芦原義信は「街並みの美学」のなかで、イタリアの街並みには街路と建物の間にあいまいな空間がないのが特徴だと指摘しています。このことは実際に現地の街並みに接してみるとよくわかります。路地のような幅員の狭い街路では、建物の屋根が視線に入ってこないので連続した建物が壁の連なりにしか見えません。つまり要素として見た時、街路と壁しかないのですが、街並み評価式では建物(b)は壁であっても構わないので適用に問題はありません。

① イタリア・サンレモ市ピーニャ地区(2013年6月現調)
 ピーニャの街並みは私の街並みに対する見方を変えるようなインパクトを持っていました。それを一言でいうと「街路の力」です。かなり安普請の建物が並び、スラムになりかねない地区をよみがえらせたのが美しい街路だったからです。

 街路(a):ピーニャ地区は斜面地に位置しているため、住人は町で買い物をするとビニール袋をぶら下げて坂や階段を登ってくる。やはり年寄りが多いが若者もいる。真ん中にレッドカーペットを敷いたように帯状にレンガを敷き、両側は子供のこぶしぐらいの石ころが丹念にモルタルに埋め込まれている。しかも石ころを埋め込んだ両側の断面はU字状になっていて、低いところを雨水が流れる。基本的な仕様は共通であるが、長い年月をかけてつくられてきているため、初期のものはレンガも黒ずんでいたりするが、一貫してこの手作業でしかできない面倒な仕様の舗装を貫いている。そして見事に街並み溶け込んでいる。(+2)
 建物(b)街路に立ってもほぼ壁の連なりだけしか見えない。ピーニャ地区を見下ろせるところまで行くとオレンジ色の瓦で葺かれた屋根が美しいが、街並みを歩いても屋根は視野に入ってこない。建物の評価は壁の評価になるが、最近塗り替えられたような右側の壁には質感は感じられない。左側の壁は古いレンガを積んだものがそのままであるが、色がまだらで不快ではない。余計なものは両側の壁をに沿っている縦樋であるが、減点対象にするほど目障りでもない。そこで±0とする。
 街並み空間形成係数(c):街路の舗装が大きく貢献して街並みとして全体を見ると際立っているので係数は3

 街並み評価点d=(2x5+3)x3=39

ピーニャの街並み

 
 因みに街路がつぎはぎだらけのアスファルト舗装のままの隣接した通りを評価してみる。ここもいずれはピーニャ式の舗装が行われるかもしれないが現状は以下の通り。
 街路(a):道としての機能は一応充たしているが、美しさという点ではー2。
 建物(b):壁だけでなく建物全体が見える家もあるが統一感はないので−1。
 街並み空間形成係数(c):街並みがあるとは見なせないので1。

 街並み評価点d=(2x1+2)x1=

 ピーニャ式の舗装がされているかどうかでここまで点数が開くのが、両方の街並みを見比べて納得していただけますか?
未整備の道



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