2014年3月23日日曜日

街並み評価方法 試案

 2013年の5月から6月の1ヶ月間、フランスからイタリア北部の都市を巡遊して、各地の街並みを見てきました。その模様は既に「南欧自転車ぶらり旅」として本ブログにアップされております。しかしそれから8ヶ月経っても肝心の街並み調査の成果が報告されていないということは、怠惰の極みで誠にお恥ずかしい限りです。
 ただ、素晴らしい街並みに出会っても、「大変いい街並みでした」としか云えないのはできの悪いグルメリポーターのようで実に情けない。言い訳めきますが、今まで見てきた街並みを的確に評価する方法論を何とかひねり出そうとしていたのも確かです。
 この方法論は日本でも海外でもどのような街並みにでも適用できることが絶対条件で、これによって日本とイタリアの街並みを同じ評価方法で比較することが可能になります。また商業地区の街並みと住宅地区の街並みも全く同じ手法で評価できることが望ましいと考えました。
 よい街並みというのは街路と建物の融和によって醸し出されるもので、建物としては大変美しく優れていても、街並みという観点でみると街路などの要素と一体化し街並み空間として特別な雰囲気を醸し出すところまで行っていない場合もあります。逆に建物は壁の連なりだけで、しかもモルタルが剥がれていたり、やや壁も薄汚れていても、街路との融和がうまくいくと玄妙な美しさを生み出すこともできるのです。
 こういう感性的な要素も取り込むことによって行き着いた評価方法はシンプルなもので、しかも誰でも簡単に使うことができるものです。これで今まで見てきた内外の街並みを評価して今後本ブログに載せていくつもりです。

評価方法
 
 まず、簡単な数式をご覧に入れます。
   d=(2a+b)c
a=街路と街路上の附着物(電柱、街灯、街路樹、標識、広告看板など)
b=建物群と敷地内構築物(塀(フェンス)、擁壁(石垣)、広告看板など)
c=街並み空間形成係数              
d=街並み評価点
 この数式では、街並みを大きく街路と建物の二つに分け、街路に建物より2倍の評価点を与えています。これはいろいろな街並みを実地に調査してきた経験から、街並みを形成する上で街路の比重の方が建物よりも大きいという実感に基づいています。日本の街並みを見ると建物の比重の方が大きい感じがしますが、イタリアなどでは建物は街並みに対して壁の連なりでしかない場合が多く街並みを際立たせるためには街路の要素が大きいのです。また商業や観光を目的とした地区では蔵屋敷とか茅葺き屋根など建物で特徴づける街並みの形成が行われますが、住宅地では建物に統一感を持たせるなどで街並みを作り上げることはむずかしいため、街路樹や生垣などで建物の存在を希薄化することによって街並みを形成する場合が多いのですが、どういう状況でも街路が大事と言うことから建物と街路に差をつけています。
 aとbは、5段階評価をします。3を標準として貢献要因があれば+1、+2、逆に阻害要因があるなら-1、-2となります。ここで標準の3は、街路(a)ならアスファルト舗装やコンクリート舗装などで道路標識や街灯などが普通にある道です。ただ注意していただきたいことは電柱と架空線は入っていないことです。これはグローバルを意識した場合には、ないことが当たり前であり、街の景観をスポイルする最大級の阻害要因になります。
 建物(b)の場合の標準は、その土地で普通の建物がある状態が3です。フェンスや生垣、擁壁なども普通にある分には標準です。ただ街路上から見て好ましい感じや目障りな感じを受けた場合にはプラスマイナスをします。重要なことは意匠にこだわった建物があるからプラスということはなくて、家並みとしての連続性で見た場合にどう見えるかで評価しなければなりません。単体の建物で評価がアップするのは、ランドマーク的な建物です。歩いていると視線を引きつけられるような建物です。
 街並み空間形成係数(c)は、街路と建物の評価点が2倍になったり、3倍になったりする強力な係数です。これが厳密な意味での街並みがあるということを意味する係数です。街並みというのは突然目の前に現れると理屈抜きで平面的な景観が3D(立体画像)になったようなインパクトのある街並みです。その程度によって2倍か3倍かを決めますが、これは感じ方なので個人差もあるため客観的な基準は決められません。ここで試案として提示させていただいている数式では、街並み空間形成係数が1の場合の最大値は15です。道路も建物も最高点5をつけても、街並みから得られる感動はないという場合です。これに対して、街路も建物も標準の3だけど、どういうわけかちゃんと街並みとして成立しているという場合(おそらく街並みができている最小値)は18点になります。

 街並み評価式の最高点は45点で、最低点は3点です。世界中どこの都市に行ってもこの式を適用して簡単に評価することができます。18点以下なら厳密な意味での街並みはできていないことになり、18点以上なら見る価値がある街並みになると思います。すくなくとも一人の人の心を動かした街並みであることがわかるからです。

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