2014年4月17日木曜日

街並み評価式 適用事例海外編(3)

④ イタリア・ボローニャ市
 ボローニャはポルティコの街である。暇な人間が数えたらボローニャだけで3千ぐらいあったとか、これを何とか世界遺産に登録したいとかいろいろ話題があるようだ。しかし街並みを評価する上でポルティコを街路の一部と見なすか、或いは建物の一部としてコリドーのように見なすか迷う。結構美しくできているポルティコもあれば、まことにみすぼらしいものもある。あまり先入観を持たずに評価してみよう。

 街路(a):個人的にはこの写真のケースでは、ポルティコは建物の一部と見る方がいいと思う。本来なら歩道になるべきところが半分建物の中に収まっているためだ。ポルティコなしで街路を評価する。一応舗装面には石が張られているが、表面があまりきれいではない。(±0)

 建物(b):両側の建物はコーニスが通っているわけではない。2階以上を支える柱の存在感が大きいが、街並みを形成する上でどれだけ評価できるかというと、残念ながら加点は無理である。ポルティコは街並みを阻害しているとさえ思える。道路に面した建物が壁だけで1階に出入り口があるというなら標準であるが、ここでは(−1)である。

 街並み空間形成係数(c):ちょっと残酷かもしれないが1である。

 街並み評価式d=(2x3+2)x1=
ポルティコのあるボローニャの街並み


⑤ イタリア・トリエステ市
 トリエステはイタリアでも一番東の端にある街で、オーストリアやスロベニアと国境を接している。100年前まではオーストリア帝国の領土であった。

 街路(a):街路の幅員は2mというところ。でも張られた石はきちんとしているきれいである。(+1)

 建物(b):壁の連なりである。縦樋が目障りであるが、これ1本であるから目をつぶる。壁は一部汚れていたり、落書きも見えるがこれも目をつぶる。(±0)

 街並み空間形成係数(c):路地空間であるがしっかりと街並みはできている。2

 街並み評価式d=(2x3+3)x2=18
トリエステの街並み


2014年4月8日火曜日

街並み評価式 適用事例海外編(2)

② イタリア・ジェノバ(2013年6月現調)

 ジェノバはリグリア州の州都であり、イタリアでも6番目の人口(61万人/08)を有する大都市である。リグリア州ということはサンレモと同じ州で、しかもリグリア海(地中海)に面した港町であるが、人口規模はサンレモの10倍以上もある。
 そしてここで取り上げる街並みは、街路舗装の仕様などはサンレモのピーニャ地区と類似しているが、街並み形成という点ではピーニャに及びもつかないという事例である。

 街路(a):街路の中央は石ころをモルタルに埋め込み、レンガはその両側に敷かれている。かなり急傾斜の道で車の通行はできない。すぐ近くに丘の上をめざす人のためにケーブルカーが設置されており、現在の人通りも少ない。(+1)
 建物(b):左手の建物は住宅だと思うが壁が連なっている。右手の擁壁の上は公園になっている。擁壁はただのコンクリート打ち放しである。ここで最大の問題は手が届く範囲の壁に夥しい数の落書きが放置されていることだ。落書きやゴミの放置などは町が壊れていくもっともわかりやすい兆候である。(−2)
 街並み空間形成係数(c):素材としては悪くないが、この状態で街並みを楽しめる状態ではない。(1)
 
 街並み評価式d=(2x4+1)x1=
ジェノバの街並み  




 ③ イタリア・ヴィチェンツァ(2013年6月現調)

  ヴィチェンツァはヴェネチアを州都とするベネト州に属している。近代的な建築家の祖ともいわれるパラーディオが設計した建物が数多く残る街である。建物への意識が高いヴィチェンツァのゆるやかにカーブする街路の街並みを評価してみる。

 街路(a):ピンコロ石を放射状に組み合わせていった定番的な舗装部と両側にボーダー的な石を線状に配し、建物と接する端部は石の並びをかえて舗装している。やや地味ではあるが、建物との間に曖昧な空間が全くない典型的な街路である。(+1)
 建物(b):建物はコーニア(軒線)も通っていないしファサードも高さもまちまちだが、バルコニーの鉢植えや街灯などがアクセントになっている。(+1)
 街並み空間形成係数(c):商業地のような派手さはないが緩やかなカーブが効果的である。(2)

 街並み評価点d=(2x4+4)x2=24
ヴィチェンツァの街並み



2014年4月3日木曜日

街並み評価式 適用事例海外編(1)

 日本国内だけでなくアジアでもヨーロッパでも、そして住宅地だけでなく商店街やオフィス街でも普遍的に適用できる評価式をつくることが目的なので、海外でも適用してみることにします。場所は昨年(2013年6月)調査してきたイタリアの中から、4都市をピックアップして試してみます。
 芦原義信は「街並みの美学」のなかで、イタリアの街並みには街路と建物の間にあいまいな空間がないのが特徴だと指摘しています。このことは実際に現地の街並みに接してみるとよくわかります。路地のような幅員の狭い街路では、建物の屋根が視線に入ってこないので連続した建物が壁の連なりにしか見えません。つまり要素として見た時、街路と壁しかないのですが、街並み評価式では建物(b)は壁であっても構わないので適用に問題はありません。

① イタリア・サンレモ市ピーニャ地区(2013年6月現調)
 ピーニャの街並みは私の街並みに対する見方を変えるようなインパクトを持っていました。それを一言でいうと「街路の力」です。かなり安普請の建物が並び、スラムになりかねない地区をよみがえらせたのが美しい街路だったからです。

 街路(a):ピーニャ地区は斜面地に位置しているため、住人は町で買い物をするとビニール袋をぶら下げて坂や階段を登ってくる。やはり年寄りが多いが若者もいる。真ん中にレッドカーペットを敷いたように帯状にレンガを敷き、両側は子供のこぶしぐらいの石ころが丹念にモルタルに埋め込まれている。しかも石ころを埋め込んだ両側の断面はU字状になっていて、低いところを雨水が流れる。基本的な仕様は共通であるが、長い年月をかけてつくられてきているため、初期のものはレンガも黒ずんでいたりするが、一貫してこの手作業でしかできない面倒な仕様の舗装を貫いている。そして見事に街並み溶け込んでいる。(+2)
 建物(b)街路に立ってもほぼ壁の連なりだけしか見えない。ピーニャ地区を見下ろせるところまで行くとオレンジ色の瓦で葺かれた屋根が美しいが、街並みを歩いても屋根は視野に入ってこない。建物の評価は壁の評価になるが、最近塗り替えられたような右側の壁には質感は感じられない。左側の壁は古いレンガを積んだものがそのままであるが、色がまだらで不快ではない。余計なものは両側の壁をに沿っている縦樋であるが、減点対象にするほど目障りでもない。そこで±0とする。
 街並み空間形成係数(c):街路の舗装が大きく貢献して街並みとして全体を見ると際立っているので係数は3

 街並み評価点d=(2x5+3)x3=39

ピーニャの街並み

 
 因みに街路がつぎはぎだらけのアスファルト舗装のままの隣接した通りを評価してみる。ここもいずれはピーニャ式の舗装が行われるかもしれないが現状は以下の通り。
 街路(a):道としての機能は一応充たしているが、美しさという点ではー2。
 建物(b):壁だけでなく建物全体が見える家もあるが統一感はないので−1。
 街並み空間形成係数(c):街並みがあるとは見なせないので1。

 街並み評価点d=(2x1+2)x1=

 ピーニャ式の舗装がされているかどうかでここまで点数が開くのが、両方の街並みを見比べて納得していただけますか?
未整備の道